ピーターラビットの謎―キリスト教図像学への招待
かわいいいたずら子ウサギのお話は、キリストの受難を描いたものだった…!?さまざまな宗教画、図像学の約束事ほか、多くの傍証をもとに見事な結論に導く異色の「絵画推理」。
絶版ですけど、アマゾンで古本が購入できます。
目からウロコ, 2005/1/19
学生時代に益田教授の講義を受けていました。
絵画にはきちんとしたルールがあって、聖書や神話の登場人物にはシンボルマーク、シンボルカラー、シンボルとなる草花など細かく定められており、それを手がかりにその絵が何を意味するのかが必ずわかるようになっている・・・。そういった図像学を「イコノロジー」といいますが、ロクに知らずに受けた最初の講義で披露されたのが、この「ピーターラビットはキリストの受難を描いたもの」という話。たくさんの図版を参照しながら明解に解説されていく講義に目からウロコで興奮したのを思い出します。
それ以来、キリスト教図像学、聖書などの知識にはまり、海外の美術館や教会をめぐるのが趣味となりました。
「イコノロジー」に関する入門書としては若桑みどり著作もおすすめです。
コメント・書評
一見とてもきれいでかわいい本です。
タイトルは「ピーターラビットの謎」
表紙にはピーターがマクレガーさんの庭へ行く場面。
アイヴォリーの紙にグリーンのタイトルスペース。
よく見れば小さいサブタイトル「キリスト教図像学への招待」があるのですが目に入りません。
中をめくればヴィクトリアンな植物デザインの縁取りの中に文章があり、ヒルトップハウスの写真やピーターの絵がたくさん載っています。
所々にキリスト教の絵も入っているがこれも色がとてもきれいです。
なんとも美しくかわいく優雅な本ではないですか。
ただし、内容は手ごわいです…
「ピーターラビットのおはなし」にはキリスト受難の物語が隠されている、というものですが決してトンデモ本ではありません。著者もその点を誤解されることを心配しています。
ぶどうパン、ブラックベリー、黒ツグミ、ヒイラギなどのモティーフを説明しながら徐々に読者を説得してゆきます。
学者の方にありがちな独り善がりの文章ではなく、わかりやすく、考証のしっかりとしたものです。
キリスト教美術の空間や構図の変遷などもわかりやすく、また、ポターの日記に度々でてくるラファエル前派の絵にはどんな意図があったかなどの言及もあります。
さらにヨーロッパの風物の説明に引用されているのは碩学の林達夫です。
読む者がさらに連想を広げ、興味を広げさせてもらえるような内容なのです。
文句なくおもしろく、本好きな知人たちに胸を張って薦められる本だと思います。
