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香草の図像学

2005/06/29 (水) 香草の図像学
http://www2.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=173842&log=200506

二週間前に読んだ『薔薇のイコノロジー』(若桑みどり著)の流れで別の図像学の本を読んだ。

『ピーターラビットの謎 キリスト教図像学への招待』益田朋幸、東京書籍、1997年

本書の第一章「ハーブのフォークロア」ではピーターラビットに登場するハーブのイメージが説明されていた。「かみつれ/カモミール」は精神安定剤でもあるが古くさいお婆ちゃんの薬でもあること。「うさぎたばこ/ラベンダー」はウサギの臆病さとラベンダーの記憶力を良くする効能を思わせること。そしてピーターラビット絵本に登場するわけではないが名曲「スカボローフェア」の四ハーブは全て死者に捧げられる植物であることなども。

こうした西洋ハーブは西洋の人間にとっては懐かしいものだが、日本人の我々にとっては懐かしいどころか既成の現実から離れるという逆の作用を起こしているという益田氏の見方も面白かった。

ところで前に「イコノロジー」イコール「図像学」と書いたが、本書によるとこれは間違いらしい。それでざっと検索したところではこうだった。

「イコノグラフィー」
・図像学
・慣習的・伝統的な主題を扱い、図像の分類や記述を行なう

「イコノロジー」
・図像解釈学
・本質的な意味や内容を考え、寓意や象徴をとらえる

益田氏はピーターラビットシリーズの第一作「ピーターラビットのおはなし」が伝統的なキリストの受難を描いた作品としても読めるとしているのでこれはイコノグラフィーの本になるらしい。

言われてみれば洞窟の中に横たわるピーターを覗き込むメスウサギたちの姿は、磔刑後のキリストを訪れるマリアたちの姿を彷彿とさせられる。これは以前触れたバッハの「復活祭オラトリオ」の第5曲「魂よ、汝の香料は」と同シーン。ということはここでピーターが飲まされるカモミールは香油(没薬)の変化形とも読めるかもしれない。

他のも面白い。ピーターのお母さんが買う葡萄パンと葡萄酒+パン(聖餐)とのつながり。受難の鳥クロツグミ。キリストの茨の冠とも関連付けられるクリスマスの木ヒイラギ。キリストの血で胸が真っ赤に染まったとされる小鳥コマドリ。ピーターの青い上着が取られてしまうシーンはローマ兵らによる聖衣剥奪を思わせ、その上着がさらされた場所も極めつけの受難連想をさせる。「十字架」なのだから。

眉唾だこじつけだと思えばそれまで。しかしこうした読み方もできるという新しい視点は楽しい。


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