ミス・ポター
「ピーターラビット」の作者、ビアトリクス・ポターの伝記。
http://blog.goo.ne.jp/ginyucinema/e/2a0024ed3f005c07a85e0f5b7825c74c
物語が1902年から始まるというところがミソだろう。つまり、前年にビクトリア女王が亡くなり、ビクトリア朝時代は終わったのだ。女性を抑圧したビクトリア朝時代の倫理観がやがて新しく女性解放の波によって押し流されていく、まさにそのときにミス・ポターは自らの絵本を出版することに成功する。
とはいえ、ポターが育ったのは紛れもなくビクトリア朝時代であり、未婚の男女が二人きりになることなど許されるはずもなかった。1902年、ビアトリクスは36歳になろうとしているのに独身であった。今でも35歳独身子なし女は「負け犬」と言われてしまうのに、その当時はいったいどのようなものだったのだろう? 36歳にもなろうとする「お嬢様」の後をばあやが付いて歩くというのも信じがたい光景だし、そんな娘の結婚に両親が難癖つけて反対するというのも信じがたい。とにかく今の尺度では一切が信じがたいこの時代のイギリス良家の子女の暮らしぶりが興味深い。
ビアトリクス・ポターが苦労の末にやっと自分の絵本の出版にこぎつけたという描写はなく、いきなり「じゃあ、出版しましょう」という契約成立の場面から始まるために、彼女の苦労がまったく伝わってこない。そのうえ、「10冊も売れないよ」などと悪口を叩いていた出版社主の言葉と裏腹に彼女の絵本は爆発的ヒットとなるわけだが、その理由はいったいなんなのか、文学史的な解説となる台詞の一つもないために、これまた理解できない。
ミス・ポターは彼女の絵本の編集担当者と恋に落ちるが、大人二人の恋がまたこの時代らしく慎ましい。ほんとに良家の子女って大変です。
ポターはこの時代には珍しく自立心旺盛な女性であり、自分の稼いだ金で農地を買ってはその保全に務めた。今で言うナショナル・トラスト運動の草分け的存在である。もう少し彼女の環境保全運動家ぶりに焦点を当てても面白かったのだが、この映画はすべての描写が表面をなぞっていくだけなので、彼女の自立心も田舎にかける情熱もなにを源泉にしているのかわかりにくい。それでもわたしは伝記映画が好きなので退屈はしなかったが、90分ぐらいにまとめてしまったのが間違いで、もう少し丁寧にじっくり描いてもよかったんじゃなかろうか?
レニー・ゼルウィガーの<おばさんお嬢様>ぶりがなかなか微笑ましい。まあ、評価すべきはそれぐらいかな。あ、それからイギリスの田園風景が素晴らしい。死ぬまでに一度は行ってみたいけど、たぶんそれは実現しないことだろうな…。
ピーター・ラビットを自由に動き回れるアニメにしたところはいいアイデアでした。CGアニメと実写の合成に違和感がなかったのはいい。(レンタルDVD)
-----------------------------------
MISS POTTER
イギリス/アメリカ、2006年、上映時間 93分
監督: クリス・ヌーナン、製作: マイク・メダヴォイほか、製作総指揮: レニー・ゼルウィガーほか、脚本: リチャード・マルトビー・Jr、音楽: ナイジェル・ウェストレイク
出演: レニー・ゼルウィガー、ユアン・マクレガー、エミリー・ワトソン