4月4日付・雲の中の大人
春の休日。小学2年生のノンちゃんが目覚めると、母と兄に置いてけぼりにされていた。悲しくて悔しくて泣きながら木に登り、白い雲の映る池に落ちてしまう。そこへ雲に乗った白ひげのおじいさんがやって来て、彼女を助けてくれる。
http://www.shikoku-np.co.jp/kagawa_news/column/article.aspx?id=20080404000088
101歳で亡くなった児童文学者・石井桃子さんの代表作「ノンちゃん雲に乗る」だ。60年以上前のベストセラーだから今の子どもたちは知らずとも、その親たちやそのまた親たちは、読んだ記憶があるのではないだろうか。
「ピーターラビット」や「クマのプーさん」などの翻訳でも知られる石井さん。彼女の人柄なのだろう。どの作品も、子どもたちへの優しい視線に満ちていた。同時に、あるべき大人の姿も描かれていたように思う。
「ノンちゃん―」もそうだった。ノンちゃんは雲の上で、わんぱくな兄やいたずらな級友への腹立たしさを、次から次へと口にする。それを神様とおぼしきおじいさんは、ニコニコと聞いていた。
さらに彼女は、勉強など何でも一番で、自分がいかに「いい子」であるかを鼻にかけ始める。「そういう子は、よくよく気をつけんと、しくじるぞ!」とおじいさん。謙虚さを失うと必ずつまらない人間になると諭す。「そうなったら、人間はもうおしまいさ」。
きっとノンちゃんは白ひげのおじいさんのような素敵な大人になったに違いない。作品を読んで育った自分たちはどうだろう。厚い雲に覆われた現代で、石井さんが描いたような大人になれているだろうか。