【映画】『ミス・ポター』の上質な風合い
世界の誰もが知っている「ピーター・ラビット」の作者である英国の童話作家、ビアトリクス・ポターの半生を描いた映画『ミス・ポター』(UK Film Council/Hopping Mad Distributio(IOM)Ltd 制作)は、静かで強い作品である。
http://www.ohmynews.co.jp/news/20071007/15840
20世紀初頭のイギリス上流の子女が、好きなことと真っすぐに向かい合い、まっとうしてゆく姿が丁寧に描かれ、凛(りん)とした芯の強さにあふれている。その強靭さは深いところで観る者の心を打ち、終始、端正な心持ちで画面に見入らされる。佳作『ベイブ』を手がけた監督クリス・ヌーナンのもの静かで、奇を衒(てら)うことのない演出は、全篇を貫く品の良い上質な風合いを生み出した。
(角川映画提供)
さりげなく、しかし実に効果的に使われるCGも、手触り感やさしい。主演のレニー・ゼルウィガーの端正な演技とも相まって、ポターの喜怒哀楽が鮮明に印象づけられる。観客は主人公の内面に自然と共感、共鳴し、気がつくと温かで優しい涙を流している。共演の編集者に扮(ふん)したユアン・マクレガーの、誠実な存在感も愛おしい。
全篇を彩るイギリス湖水地方の景色が、ことのほか美しく、ポターが大きな不幸を経た後にその地を守るため奔走することの説得力にしかと繋がって行く。
人は、風景の美しさだけで悲嘆を克服することはできない。大きな不幸は、創造力のはばたきと四囲の美しさのかけげえなさを守ろうとする意思の強さによって、初めて癒される。作品は、そのことの普遍性を、理知的に語っているのである。
映画『ミス・ポター』は角川映画配給で、全国上映中。詳細は公式HPで。
(角川映画提供)